第9章 現代鬼殺隊 〜プロローグ〜
夜1時。
奏は黒のスキニーに黒のパーカー、背中に日輪刀を背負う。
そして黒猫の半面を付けた。
これが奏の戦闘服だ。
高めに括ったポニーテールを揺らし、ベランダに足を掛ける。
ヒョイっと身を乗り出して近くの木に飛び移る。
…と言っても並の人間が届く距離でもないが。
その木から隣の屋根に飛び移り、八重の案内のもと鬼の所へと向かっていく。
アパートの一室ということは、普通の人間として暮らしていることが多い。
虐待か…?DVか…?
そう考えながら向かっていくと、新しそうなアパートの前に来た。
(こんな綺麗なところに?…もっと寂れたアパートだと思ってた。)
すると八重はある部屋のベランダに止まる。
「あそこね。」
奏もベランダに降り立つ。
その部屋は電気は付いておらず、暗い。
皆寝ていて当たり前の時間。
しかし、中を確認したい。
すると、ガタガタっと物音がする。
揉めていたり、騒ぐ声は聞こえない。
…泥棒か?
ならばとコンコンとベランダに面した窓を叩く。
泥棒なら気配に敏感になり顔を出すだろう。
奏の狙い通りカチャンと鍵が開く。
エアコンの室外機の陰に隠れて様子を伺う。
窓からヌッと顔を出したのは中年の男。
キョロキョロと見渡した後、「気のせいか」と戻っていく。
ここの住人か?と思ったが
「さぁ、楽しもうね…」
と無音の部屋に向かって呟いた。
微かに部屋の中から香る女性らしいルームフレグランス。
まさか…と奏はベランダの植物の鉢にあった石を窓に挟めた。
中年の男は窓が閉まりきっていないのにも気づかずにいる。
そっと窓から中を覗くと、ベッドに眠っている若い女性。
その女性に男は跨っていたのだ。
(…!!女性が危ないっ!!)
——夢の呼吸 壱ノ型 一睡之夢(いっすいのゆめ)——
ふわっと菫の香りが部屋に漂い、男は一瞬で眠りについた。
そして、頸をザンッと斬り落とす。
ゴトッと頸が落ち、その隙に女性を横抱きにして救い出した。
後は姿が消えていけば…。
そう思いながら鬼に少し乱された女性の身なりを整えてやる。
すると、ガサッと音がした。
気配に気づいて振り返った瞬間
中年の男はぐらりと立ち上がっており、頸も戻っていた。