第8章 愛情表現 【我妻】
「だぁ!もぉ!俺は奏ちゃんのことが好き!
大好き!奏ちゃんが誰かと付き合うってなったら、この世の終わりってくらい好き!!」
「私だって!善逸くんにどれだけ冷たくされたって好き!他の女の子にデレデレしてても諦めきれないくらいに好き!!」
喧嘩のように言い合われている愛の言葉。
ゼェゼェ息を切らしながら、睨み合っている。
そんな自分達達が可笑しくて。
「…ぷっ」
「く…くくっ」
吹き出してしまった。
「ごめんね、奏ちゃん。
俺、耳がいいから人の考えていることが大体分かっちゃうんだけど、奏ちゃんからは不安な音がしてたんだ。」
「え…?」
「炭治郎達と一緒にいる時は楽しいって音がしてるけど、俺に話しかけてくる時は不安そうな音で。
初めて会った時も同じ音してた。」
初めて会ったあの日、私は確かにどこに行けばいいのか不安だった。
その音が…ずっとしてたんだ。
「入学式の時は本当に不安だった。
でも、善逸くんに話しかける時に不安だったのは、嫌われてるんじゃないかって思ってたからだと思う。」
「そ、そっか…。俺が素直に慣れてれば、もっと違う音がしてたのかもしれないね。」
そう言って善逸くんは、あの日教室に入る時みたいに、柔らかく笑った。
あ…
ドクンって今自分でも分かるくらい心臓が高鳴った。
「えっ、奏ちゃん⁉︎今すごい音したけど⁉︎」
すごい、本当に聞こえてるんだ!
「は、恥ずかしいから聞かないで!!」
「え!今俺にときめいた音なの⁉︎も、もっかい!もう一度聞かせてよぉ!!」
「絶対に嫌!!だめだめ!」
そんなことをしているうちに、善逸くんは私の手首を握り、私たちは目が合った。
目を外らせることができない。
だって、善逸くんの黄色がかった目が真っ直ぐ私を見るから。