第8章 愛情表現 【我妻】
でも、彼を追いながら気づいたことがある。
曲がり角はいくつもあるのに、絶対に彼を見失うことは無かった。
立ち止まっている風もないんだけど、絶対に視界に彼がいる。
(待って…くれているのかな?)
しばらくすると、いつの間にか高等部についていた。
「つ、ついたぁ。」
無事にクラスに行ける安堵感に泣きそうになる。
道案内をしてくれた彼は、
教室に入る前に、ふっと柔らかな笑顔を見せてくれた。
…私はこの時、彼に恋をした。
奇跡的にも同じ学年、同じクラス。
だがしかし。
「あ、あの…この間はありがとう。」
後日、お礼を言うと彼は眉間に皺を寄せ
「え?何のこと?」
と、言われてしまった。
「え、中等部から案内してくれた…」
「案内した覚えはないよ」
え…えぇ。