第8章 愛情表現 【我妻】
あれは入学式の時、私は学園内で迷っていた。
ここは中高一貫。
高等部にいたはずなのに、いつのまにか中等部まで来てしまった。
流石に制服も違うので、
ここは間違ったと分かってはいたのだが、
なんせ出口がわからない。
その時
「禰󠄀豆子ちゃん、今日も可愛いねぇ…」
「もう!善逸さん!高等部に戻ってください!」
声の方を見ると、教室の入り口から中を覗き込む男。
そして、髪の長い可愛らしい女の子に、すごく怒られている。
ヤバい男だ。
そう思った。
「ちぇー、分かったヨォ。」
そう言ってドアから離れた彼と、目が合った。
ここは中等部。
なのに自分と同じ高等部の女子がいることにビックリしたのだろう。
彼の目が見開かれたのが分かった。
私は藁にもすがる思いで「助けて」と訴える。
この年下たちの中で「迷いました」とは、プライドが言わせてくれなかった。
しかし、彼はすぐにふいっと顔を逸らしスタスタと歩き出してしまった。
「えっ…」
てっきり、どうしたのか聞いてくれると思っていた。
世の中そんなに甘くないということか…。
(でも、高等部の人だから時間的にもクラスに戻るよね!!)
利用する様で悪いが、私は勝手について行くことにした。