第7章 初恋 【悲鳴嶼】
翌日、昼前くらいに
奏を養子にと言った男が迎えにきた。
「げんきで。」
「また、たきこみごはんつくるね。」
そう書いて離れる指先。
本当はその指を離さないでほしかった。
行かないで欲しい。
そう思っている自分がいて、
その時、ずっと奏に思っていた感情が
恋なのだと知った。
男に連れられてだんだん遠ざかる奏の気配。
悲しくともこれが現実。
行冥にはどうすることもできなかった。
住職の話によると、その男は食事処を営んでいるらしい。
妻と娘を鬼に殺され、心を痛めていたが
また前を向きたいと養子を探していたようだ。
きっと、そこで看板娘へと成長していくのだろう。