第7章 初恋 【悲鳴嶼】
そう意識し始めると、急激に恥ずかしさが込み上げる。
彼女が手をキュッと握る度に自分の心臓が高鳴った。
(落ち着け、彼女に怪我をさせるわけにはいかない。)
そう言い聞かせて進んでいくと…
つるっ
「うわっ!!!」
バシャーン!!
大きな飛沫が上がった。
「…だいじょうか?」
転んでびしょ濡れになっているのは奏…
ではなく、行冥だった。
奏に意識を向け過ぎてしまった行冥は
自分の足元に気が向かず、滑ってころんでしまったのだ。
奏は自分の目の前で転ぶ行冥を受け止めようとしたが、間に合わず、行冥の飛沫を浴びて同じくびしょ濡れだった。
行冥の言った「大丈夫か?」は奏こそ問いたかった言葉だ。
あわあわと行冥を助けようと手を掴んだり、腕を掴んだり一生懸命な奏には悪いが、絶対に濡らさないようにと気を使った結果に笑わずにはいられなかった。
「ぷっ、はははは!!」
急に笑い出した行冥に驚く奏。
しかし、2人でずぶ濡れになっていることに気づいた奏も「ふ、ふふっ」と笑い出した。