第65章 家系
「硝子、いるだろ?」
その日の夜、コンコンとドアを叩かれた。
電話中だったのがタチが悪い。
『今の誰』
「同級生。寮なの知ってるでしょ」
『本当?』
こういう関係じゃないのに。
なんで不機嫌に付き合ってあげないといけないんだ。
(なに)
ドアを開けて口パクで聞く。
すると、悟は?と。
知らない、という意味を込めて肩を上げた。
「……はいはい、行くよ。切るよ」
そして、夏油ではなく、電話の相手を切りあげる。
相当優先順位が下であることが分かるだろう。
「すまないね」
「別に。五条、いないの?」
「そ。千夏のことまだ探してるのか?」
「なんで私に聞くの。知らないわよ」
知るわけない。
連絡取ってないし。
「出かける感じ?」
「そう」
「この時間に呼び出す男に価値があるとは思えないけど」
「私もそう思う」
それでもわざわざ着替えて出かけるのは、少なからず会うメリットがあるわけで。
「はぁ……お前、まじ最高」
承認欲求?
この微妙に満たされる感じがなんて言葉で言い表されるか分からないけれど…。
とりあえず、スッキリする。
けれど、誰でもいいわけであって、この人がいいわけではない。
なんなら、最近の態度がウザイから縁を切りたいくらいだけれど。
「あのさ、今日で最後にしよ」
縁を切るなら早めに。
そう思って伝えたら殴られた。
逆ギレそのもの。
殴った後には縋るように謝ってきて、お前しかいないとか、お前じゃなきゃダメなんだ、とか。
いやいや、笑わせんな。
お前が気に入っているのはこの体だろ。
(だっさ…)
今日もまた、1人寂しく寮に戻る訳だが。
このまま戻れるわけが無い。
体は勝手にこの間のラーメン屋を目指していた。