第64章 生き方
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『そうだな…。千夏はあそこのビル。最上階まで行って降りてこい。怪しいヤツがいるかいないか見るだけで良い』
「呪霊は?」
『祓った方がいい。でも、任せる』
千夏は出かけるようにしてビルの中へ入っていった。
「さて、我々も…」
『いや、大丈夫だ。求めてるヤツはあのビルにいる』
あのビル、とは千夏が向かったビルのこと。
「なぜ分かるんです」
『見たから』
「見たとは?」
『私は千夏がいれば、大抵の事はできる。”透視”なんていうなよ?立派な術式の応用だ』
透視、透視、と言うやつは実際にいる。
何度説明してもいつの間にか透視という理解に戻ってしまうのだ。
「なら、どうしてひとりで行かせたんですか」
『お前、1回落ち着け。そのまま行ったら死ぬぞ』
コイツは頭がいい。
勉強ができる、とかではなく(もちろん、できるのだが)、人間として成熟し、そして人間らしい。
「私はいつも通りです」
『なら、どうして二手に分かれると提案しなかった』
「…」
『千夏を気遣う必要は無い』
千夏も気づいているだろう。
それに、この状況で笑ってたんだ。
狂ってる。
それは分かっている。
『勝手にさせとけ。簡単には死なないさ』
「…その油断がs」
『油断じゃない』
私だけでは術式は使えない。
約36メートル。
これが私と千夏の最高距離だ。
『千夏の努力を信頼している』
「…そうです、ね」
いい加減千夏も、周りに頼るのは飽きただろう。
「行きましょう」
『ああ』
あの子は頑張った。
沢山の苦痛を乗り越え、耐え、努力した。
だから、そろそろ報われてもいいだろう。