第63章 望まれた暁には死を
「七海。千夏と一緒に行け。学長命令だ」
「…はい」
「ちなみに、そっちの人は千春さんだ。千夏の姉」
いつも通りのだるそうな目を向けられたので、「色々あったの」と言うと「どうでもいい」と跳ね返される。
七海ちゃんは相当苛立っているみたい。
「じゃあ、行ってきます」
「あ、千夏」
ピンッ…と金属製の何かが空を舞って私の掌に落ちる。
「頑張れ」
それは人の横顔が彫られているコイン…で。
意図は分からないけれど、無くさないように胸のポケットにそれを突っ込んで、力強く頷いた。
「…一つ。私はとてもイラついています」
「うん。見て分かる」
「今からその原因を潰しにいきます」
「うん。目星は?」
「被害を見る限り、外側から内側へ移動しているようなので、その中心部へ向かってます。……まぁ、貴女の術式で、ですが」
空から見る街並みは灰色1色で。
いつものネオン街はどこにもない。
『犯人を見つけて、どうするつもりだ』
「……祓う、もしくは、殺します」
千春と目が合う。
『いいのか?不満があるならその都度解消しなさい。お前の不機嫌に付き合う時間は無い』
「……不満は、ない。ただ、これが、純粋な殺意じゃないから、戸惑ってる」
『純粋じゃないとは?』
上手く言うことが出来ないけれど、ここで起きている戦いは、私が今まで経験してきた戦いのどれとも相反している。
「誰かを救うための戦いは知ってる。でも、特定の誰かを助けるための戦いは…初めてに近い」
だから、戦いにくいのだ。
私の判断が、その誰かの命に直結する。
今までも命に直結していたけれど、それは不特定。
自分の気持ちや責任感が大いに異なる。
『それは純粋じゃないのか?千夏にとって純粋とは?』
「……上手く言葉にできない。けど、多分…自分勝手…というか、自分が助けたい人を助ける、っていう選別が純粋じゃないんだと思う。他の場所でもみんな困ってるのに…」