第63章 望まれた暁には死を
『今から私はこの体に乗り移る』
「乗り、移る!?」
『分かりやすく言ってるだけだ。厳密には違う』
「…ママは生きてるの?」
『ギリギリ。五条悟の所まで持つかと思ってたけど…無理そう』
無理そう。
死ぬってことか。
「…パパとは、もう話さなくていいの?」
『もういいって』
すると、千春は優しく、隙間ひとつないくらいにくっついてきた。
『これから私は肉体を持つ。今までのように千夏を守ることが出来なくなる。肉体が壊れれば、私はどうなるか分からない』
「分からないって………そんな、博打みたいに…」
『前例がないんだ。でも、成功すれば紅も私の中で生き続け、五条悟も救える……と思う』
……待って。
ということは、失敗すれば……!
今年になって、夏を過ぎて、嫌という程考えた未来。
千春が居ない未来────
でも、こうしないと悟を救えないし、ママも無駄死に…。
せっかくのチャンスを無駄にするの?
「…うん。私、運はいいんだよ」
『……じゃあ、やるぞ。千夏は外に出て?』
「うん」
先程食事をしたおかげで、段々と思考がはっきりしてきた。
けれど、まだ体はだるいし、少し熱っぽい。
……熱っぽいのは……ん、まぁ、おいておいて。
「……彼女は?」
「あ、なんか死んじゃいそうだから、千春が…」
「そうか」
最後まで言ってないのに。
「彼女とは……どんな話を?」
パパは自分のペースで話を進める。
「えっと、私を産んで…」
「それより前の話は?」
「特に…。パパの話はほとんどしてない」
パパは表情を変えることなく、深く息を吐いた。
そして、普通の呼吸へ戻る。
「あの、パ」
「その呼び方はやめろ」
怒っているわけではなく、ただ……心底私を拒絶している。
「……ごめんなさい」
声色から態度から…
それは明らかすぎるほどだった。