第63章 望まれた暁には死を
「まぁ、私の体もいつまでもつか分からないしね〜」
どういう過程で生き返ったのか分からないけれど、この体は所詮紛い物だろう。
千春ちゃんにその過程を聞いている余裕はなさそうだし、自分の感覚……主に脈拍を頼りに残りの時間を考える。
『…お前の体が限界に近くなったら、貰っていいか』
唐突に、千春ちゃんがそんなことを言い出した。
「……ああ、なるほど。賢いね」
怨霊は実態がないから、怪我なんてしないし、移動もスムーズだ。
利点が数える程あるのに対し、欠点はあまりない。
しかし、今回の敵を相手にするとき…初めてと言っていいほど、欠点が利点を上回る。
「でも、上手くいくか分からない」
『やるしかないだろ。術式を吸収されて、千夏を傷つけるよりマシだ』
唯一といっていいほどに相性が悪い術式を持つ敵。
これは運命なのだろうか。
「そうね……って、千夏ちゃんは?千夏ちゃーん、ついておいでー!」
正直、誰がどこで死のうと、死んでいる私からしたらどうでもいいこと。
それは自分にも、千春ちゃんにも当てはまる。
例外はない。
あいつに会えればそれでいい。
あいつに会えれば、この体を千春ちゃんにあげようが、再び死んでも。
なんでもいい。
「ごめん」
「わっ…そんな移動方法あり?」
ぎゅん…!と、一瞬のうちに近づいてきた。
「ありだよ」
「それできるなら最初からやろうよ」
「…確かに、そだね」
またしゅんとしちゃった。
千春ちゃんに睨まれるけど、これって私のせい?
「あのさ、ママ…」
ママ呼びにも慣れてきたけれど、まだ不快感はある。
「悟のお父さんに会うの、やっぱりやめない?」
私も千春ちゃんも、これが逃げのセリフであることはわかっていた。
「やめないよ」
「だよね…」
「怖いの?」
私は自分の父親が誰か知らないから、千夏ちゃんの気持ちは分からない。
けれど、突然父親が知り合いの父親であると知ったら…。
……確かに臆病になるかもしれない。
「…言葉にするのが怖いなぁ」
「何を?」
でも
「生きててごめんなさい、って。ちゃんと言えるかなぁ」
この気持ちは分かる。
痛いほど、分かってしまう。