第9章 陳腐な七色、儚い紅
結局、七海ちゃんにはこってり怒られ、ねずみ花火を禁止された。
なんでねずみ花火かというと、私が楽しみにしていたから。
本当に七海ちゃんは私をいじめるのが好きみたいだ。
「これ見ろ!花火、四本持ち!」
「こっち来ないでください」
「ほれほれ!」
「やめてください。……」
「ちょ!熱いから!」
花に水をやるように。
私に花火を向けてきた。
あれだけ怒っていたくせに、私よりたちが悪いではないか。
「最後はやっぱり…」
「「線香花火!!」」
こういう時に気が合うのは灰原だ。
いつもだったら五条も入ってくるのに、今日は硝子たちの『普通に楽しむグループ』に属してる。
少しつまらない。
「…ッ」
一番先に脱落したのは七海ちゃん。
こころの中で少し喜んだ。
「あ~、残念」
「僕の方も落ちちゃいました」
硝子、灰原も。
「…」
そして、ひっそり傑も脱落。
「負けねーから」
「こっちこそ」
ジリジリという音が聞こえるように、光が飛び散る。
オレンジ色の塊は今すぐ落ちたいと叫んでいる。
落ちるな、落ちるな。
この時間が続けばいいのに。
この時間が永遠に…
「これで全部終わったね」
「やり切った感があるな」
「たくさんありましたからねー」
澄んでいた水が黒く濁り、青いバケツの中は沼のよう。
飛び出ている燃えカスが、カラフルなことに違和感を覚えてしまう。
「じゃあ、帰りましょうか!」
時計を確認すると、目覚めてからに時間がたっていた。
こんなにも時間の進む速さを恨んだことはない。
「あーーーー!楽しかった!!!」
「きゅ、急に叫ばないでくださいよ!」
「だって、本当に楽しかったんだもん!!」
嫌だ。
帰りたくない。
その時。
後ろに引かれ、体が傾く。
「千夏」
みんなが足を止めた。
みんなが五条のことを見ていた。