第62章 私がそう言った
普段から適当にぶらつくことがあったし、門限を破ったのも1度や2度ではない。
だから、親も、五条悟も、誰もここには来ない。
私は千夏の意識がないと動けないのに、千夏は心を、意識を深く潜らせた。
現実を直視しないように。
自分がこれ以上傷つかないように。
ただ、時間だけがすぎていき────
日はとうに沈み……
千夏の暴走が始まった。
呪力が増える、増え続ける。
今までにないスピードで、千夏の体を壊そうとする。
千夏、ダメ。
落ち着いて。
そんな声は届かない。
千夏は、千夏の意識は別の場所にいた。
後に、千夏に聞くとこの時の記憶が無いらしく、軽くあしらわれたが、これだけは断言出来る。
この時が最も命に手がかかっていた、と。
こうなれば、縛りを再度意識させるしかない。
無理矢理にでも千夏を起こす。
”千夏。愛してるよ”
ビクッと、少しだけ反応する。
”ずっと、一緒だよ”
虚ろながらも、その瞳には光が戻る。
”……大好き”
そして、小さく笑った。
”私も大好き、愛してる”
”私の方が…大好き、だもん”
千夏の意識が戻ればこっちのもの。
いつものように呪力を逃がしてあげる。
ここまででだいぶ時間が経っている。
そろそろ誰かが来てもおかしくないが…。
”あの人、死んじゃった?”
”…あまり見るな”
”大丈夫だよ?血、別に怖くないもん”
”怖いとかそういう問題じゃない”
”それに、血、見ると、なんとかさんのこと思い出せるから好き”
なんとかさん────
”…それは?”
”最近思い出したの。みんなで暮らしてた時のこと”
千夏が指しているのが千佳さんであることは明白だった。
でも、今はダメだ。
”そ、そのとき、わ、たしの”
”千夏、楽しいこと考えよ。お歌、歌うか?”
何とか安定を保ってもらいたくて、必死に千夏に食らいつく。
千夏を外に連れてけば1発なのに、私はまだ未熟だった。
そうこうしていれば、もっと時間は無駄になり…。