第62章 私がそう言った
”なぁ、これ楽しいの?”
”あ、スコップ”
”はい”
”ありがとう。楽しくないの?”
”いや、普通”
”じゃあ何が楽しいの?”
”何も楽しくないよ”
”それってつまんないってこと?”
”そう。でも、千夏と遊ぶ時はまぁまぁ楽しいよ”
”…普通、言った”
”こんな砂の山に穴貫通させて何が楽しいか分かんないの”
千夏は五条悟と遊びたがっていたし、五条悟も段々千夏に関わるようになった。
小学生ながらの微笑ましい光景だけれど、千夏が学校をサボってるせいでお母さんに見つかるまで、または五条悟が家の人に見つかるまでの限定的なものだった。
「──ちゃんは?」
「し、し…」
「うん。いいよ?これ貸してあげる」
そして、この2人の間には──ちゃんがいた。
五条悟から見ても、いつでも祓えるような呪霊で、絶賛機会を伺っていた。
そんな風にしていたら、簡単に時だけが流れて。
10月19日。
”へぇ、もう少しで誕生日なんだね”
”……まぁ”
”嬉しくないの?”
”分かんない”
”…ふふっ!じゃあ、私がすっごいプレゼント用意してあげるね!花の腕輪とネックレスと…”
”花の冠シリーズはいらない。会う度貰ってるし”
千夏が初めて呪力を認識した日だった。
”…ん。千夏、あっち”
”葉っぱ?”
”そう。飾り付けに必要だろ?”
五条悟は何に気づいたように、千夏を手招いた。
その「何か」の存在は、私も遅れて理解した。
”おっきい葉っぱとちっちゃいの”
”色はカラフルに、だろ?”
”え〜すごぉい!なんで分かったの?”
”お前、声、落とせよな”
”声を、落とす…”
”静かにするってこと”
”しー?”
”そう、しー…”
”じゃあ…──ちゃんも、しー、ね…”
このまま、終わればよかった。
楽しいまま、終わって欲しかった。
”坊ちゃん!!”
彼女に出会わなければ────