第62章 私がそう言った
”ったく。今日の警備は手薄だな…”
”けいび?”
”とにかく、誰にもバレないうちに”
その時だった。
”よぉ”
気配もなく、突然アイツが姿を現したのは。
禪院甚爾。
私が知っている姿はもう少し子供らしかったが、全く呪力を感じも無い代わりに得た強さが滲み出ている。
”…何?”
”俺以外にも侵入者がいるとは驚きだな”
すると、簡単に千夏を摘み上げた禪院甚爾。
”こんなちっせぇのに、圧は十分か”
まずい。
つい気配を────
”これは…”
”誰です!!!!”
初枝と呼ばれていた女が、履物を履くのも忘れて庭へおりてきた。
”坊ちゃんかr”
”めんど”
そして、男の子の手を握るのと同時に、禪院甚爾はたった一度の跳躍で高い策をとびこえて外へ飛び出し逃げた。
千夏を連れて…。
”…おじさん、すごぉい”
”…”
その冷たい瞳は何を考えているのだろうか。
一方で、この感動に満ちた瞳の持ち主は、次にどのような行動をするつもりか。
”千夏、逃げるぞ”
”えー!まだごじょーくんと遊んでない!”
そんなこと、今更どうでもいいだろ!?!?
そう叫びたくなる気持ちを抑えて、何とか説得せねば。
”お前、誰と話してんだ?”
”だれと?それは…”
千夏が5歳になった時、私と約束した。
私の存在は誰にも言うな、と。
もしその口で私の名を話してしまったら、金輪際遊べなくなるし、美味しいご飯も食べれなくなる、と。
”わ、私の独り言…”
”…ま、なんでもいいか”
一応、約束をしてからは誰にも私の存在を漏らしていないが、誤魔化し方が下手くそなのはとても気になる。