第61章 封
この人は私のことを何も知らないのに、どうして私の気持ちを知ったような口をきくのだろうか。
「千夏ちゃんもこの世界が憎いでしょ?」
どうして?
「初めて呪霊を”殺した”ときのこと思い出しなよ」
私のことを知らないはずなのに、どうして知っているの?
「…紅さんは、私のママだから。私のことを知ってるの?」
「ん?……ああ、まぁね。子供の考えくらい分かるよ」
しっとりと私の心を支配してくる。
「辛かったよね。苦しかったよね。全部、この世界のせいなんだよ」
「…やめて」
「ずっと気づいてたんだもんね。千夏ちゃんのお友達…呪霊が、どんどん大好きなお姉さんの手で殺されていく」
「やめてってば」
「自分でお友達を殺した時も、周りがロボットのように呪霊を殺してたときも、ずっと泣くのを我慢して、平気なフリをしてたよね」
「な、」
「紗那さん、月影さん、凛、翔太…」
「っ」
「平田さん、新太、小花ちゃん、柊さん…」
『やめろ』
やっと、千春が止めてくれた。
どうしてここまでママを止めてくれなかったの?
もっと早くできたでしょ?
「…1番辛かったのは灰原くんの」
「やめてっ!!!!」
今は思い出に付き合う気は無い。
なのに、ママは話すのをやめてくれない。
「どうして灰原くんは死んじゃったのかな」
「ヤダっ!」
「どうして」
「聞きたくない!」
ダメだよ、千夏。
違うことを考えないと。
「…千夏ちゃんは何も、何も成長してない」
「…やめ、て」
「ずっと、ずっと、過去から逃げてる。目を逸らしてる」
「おね、が…い」
「1回でも、灰原くんや他の人のお墓参りに行った?」
耳を塞いでしゃがみこんでも、その手をどかして言葉を吹き込んでくる。
「でも、考えてみてよ。この世界がなかったら。汚い人間がいなかったら。皆死ななかった。傷つかなかった」
震えが止まらない。
「悪いのは呪霊じゃない。その根本にある人間なんだよ」
ねぇ、憎いでしょ?って。
「全部壊そう。誰も傷つかない世界を作るために」