第61章 封
ふと顔をあげてみると、紅さんはひとつも表情を抱えていなくて。
その顔はとても静寂に満ちていた。
「…ねぇ」
「は、い」
「五条家とはどういう関係なの?」
この人は死人だ。
特に警戒する必要は無いと思うけれど、少し答え方に迷った。
「単刀直入にいうと…さとし…五条さとしに会った?」
その名前は呪術師をやっていれば誰でも知っている名前。
知らなくてはおかしい名前だった。
五条さとし
悟のお父さんだ。
会ったことはない、と言うと、紅さんは少し間を置いてからニヤッと笑った。
「そっか。会いに行こう」
急展開に目をぱちくりさせる私と、何やら企んでいる紅さんの間に千春が即座に割り込んできた。
「近いな。何?」
『ふざけるな』
「何で?私はそのためにこの子を産んだんだけど」
言葉の全てを2回以上反芻しないと理解できなくなってしまっている。
千春も、紅さんも。
2人が考えていること、話していることは少し難しい。
知らない情報が多すぎるのだ。
千春は紅さんを押して押して、私と距離を取った。
当然、2人の会話は聞こえない。
秘密話をしていることは分かっている。
(…想像と違うなぁ)
いつか、死ぬまでには私を産んだ人と会うのかなー、なんて考えていた時期もあったけれど。
その妄想は全て感動を生むような再会だった。
勝手にあちら側も、私に会いたかったんじゃない?なんて、考えていた。
「私が気遣う必要ある?」
『ちょっと!』
紅さんは千春を押しのけ、私の手首を掴む。
「随分寂しい人生だったみたいね」
寂しい?
「私も辛かったの」
寂しいだって?
「お願い。私の復讐に付き合って」