第61章 封
「ハァッ…」
特に激しく動いてはないけれど、緊張感と状況に1度息を強引に吸う。
「…」
「…」
なんだ。
攻撃はおしまい?
ぼおっと面白みに欠けた空を眺める女。
静かに黒い沼のような目を閉じて、明け────
「つまんな」
彼女の目が変化した。
それはもう、綺麗な赤…いや、紅色。
「…ねぇ、なんで助けたの?」
そういえば、この雰囲気…。
どこかで見たことがあるような気がする。
「答えてくれない?」
「え、あ…」
「何?喋るの苦手?」
「いや、得意です、いや、普通って、いうか…」
落ち着け。
なんでこんなに後ろめたい気持ちが芽生えるんだ。
「…普通に、死なれたら後味が悪いというか…」
「何に怯えてるの?私…じゃないよね?」
「……貴女って、大葉初枝…さんの」
「…へぇ、知ってるんだ」
彼女は上半身だけ起こして、疲れたように肩を回す。
「大葉初枝は私の母親」
「っ」
「あの人、まだ生きてんの?」
「…うん」
先程まで感じられていた殺意は薄れている。
身動きを封じるなら今!
「てことは、五条家に何か関わりがある感じだよね」
体が固まる。
「え、何?アイツの子供だったりする?」
そうか。
この人はおばばの子供だから、五条家に居たと考えていい。
「お姉さん、何歳?」
「私の質問は無視かよ。死んだ時の年は24、かな?」
「いつ死んだの?」
「今何年?」
「2018」
「そしたら…28年前とか?暗算むずい」
そろそろ腕がキツイので、千秋と千冬を地面に寝かせる。
そして、上着をかけてあげる。
『早く殺せ』
「無理だよ。術式効かないの」
『…そうか』
体術で押せるなら、もうやっている。
けれど、先程の接近で分かっている。
この体はかなり動ける、と。