第61章 封
ひとつのことに気を取られて、他が疎かになってしまうのが、私の悪い所。
慌てて振り返れば、既に孫と呼ばれていた女性が何かを飲み込んでいた。
「大葉 紅」
おおば、べに?
誰それ、と千春の方を見れば…
いつの間にか私から奪っていた札を千秋と千冬に張りつけ、私の方へ戻ってくる。
「あれ誰…」
『2人を連れてここから離れて!』
どん、と体を押されて千春は体を大きくした。
千春がここまで反応するとなると、私になにか関係がある人。
そんなことを考えながら、千秋と千冬を抱き抱えた。
昔は私の方が小さかったのに、今は私に抱えられてしまっている。
少しだけ時の流れの残酷さを感じた。
おおば、べに。
近所の人、同級生…。
心当たりのある人はいない。
そもそも、”おおば”なんて……
”小娘!!!”
あ。
いた。
おばば。
『ちな』
千春は、早くしろ、なんて言うつもりだったんだろう。
けれど、その言葉よりも先に私の体が屋上から飛び出てしまう。
自分で宙を目指した訳では無い。
「っ!」
首元に金属が当たって、仕方なく落ちてしまったのだ。
「ひっ…」
術式を貫いてくる。
何故?
この感触は苦手だ。
このまま落ちれば、私もこの人も死ぬ。
この人には助かる方法があるだろうから、勝手に自分1人とこの2人だけで助かってみせる。
まずは術式効果を強化。
どうやら、この人とは相性が悪いらしく、一瞬の隙ができただけですぐに詰められる。
その隙を利用して私はわざと急降下して隙を広げ、そのまま空中を駆け上がり彼女の上へ移動した。
徐々に女との間に距離が生まれる。
「…」
なんだあの顔は。
地面が近づいても余裕の笑み……
じゃない!!!
コイツは自滅覚悟で突っ込んできたのか!?!?
急いで女の手を握って、自分と一緒に減速させてあげる。
もちろん、落下寸前で。
こちらもタダで殺される気は無い。
ある程度の衝撃は味わってもらうけれど、見殺しにするつもりは無い。
情をかけたわけではない。
ただ、なんとなく。
後味が悪いから。