第61章 封
「七海ちゃんがそう言ったなら頑張って。んじゃ…」
「八乙女さんは何すんの?」
何をする、か…。
そんなの、一つに決まってるではないか。
「s」
な、んで。
「「?」」
悟の名前を声に出せない。
胸がとても苦しくなって、喉が締まる。
今、泣いたら私は止まってしまう。
「…とにかく、やることがあるの。そうだ、恵。真希の呪具、ひとつ貸してよ」
「俺が怒られます」
「刀、刀でいいから」
「…」
恵はどっぷりと黒い影から刀を1本取り出して、こちらに投げた。
その性能を確認しながら、独り言のように悠仁にアドバイス。
「悠仁〜。悟が封印されたんだから気をつけなよ?」
「それさっき、猪野さんにも言われた。気をつけるっ」
猪野?
「あ、すんません。猪野です」
「嫌いなのに挨拶してくれてどーも」
「いやっ、嫌いとかじゃなくて」
一通り刀の確認が終わり、鞘に収め直す。
「七海さんが…気をつけろって言ってたもので」
「私を?何故……って」
そりゃあ、忠告くらいするか。
「それは…」
「やっぱり七海ちゃんは賢いよねぇ…」
状況に応じて行動を指示するだけでなく、忠告もできるなんて。
「その七海ちゃんは?」
「伊地知さんと合流してやることがあるって、外に出てます。用が済んだら戻ってくるかと」
「へぇ。じゃあそれまで…猪野くん、2人のこと頼んだよ」
「は、はい!」
猪野くんににっこりスマイルを届けて、私は刀を腰に指しながら行動をはじめた。
「八乙女さんに笑いかけられた…」
「…まだ耐えてたな」
「相当我慢してるっしょ。暴走したらまじヤバそう」
猪野さんは置いておいて、虎杖の言う通りだった。
刀ひとつで単独行動を始めたということは、彼女はある程度の戦力を取り戻している。
暴走を始めたら、俺達では止められるはずがない。
(とりあえず、俺らも早く帳を壊さないと…)
順路に戻って、問題の帳の元へ向かう。
既に八乙女さんの姿は消えていた。