第61章 封
あの時と変わらない目標。
未だに叶わない夢。
『そ、そうだ。千夏。あれ、歌おう』
「…」
『あんたがどこさ♪』
「…」
『ひごさ、ひごどこさ♪』
千春は正直言って、私よりも対人関係に問題を抱えていると思う。
私が好きだった手まり遊びの歌を歌えば、いつだって機嫌を治してくれると思っている。
学生時代はそれで何とかなっていたけれど、今の私は大人だ。
「千春、大丈夫だよ。私は大丈夫」
『そ、そうか…』
「心配性な姉を持つと大変だなぁ〜」
大丈夫。
私は大人なんだから、こんなことで乱れることは無い。
『来たよ』
「…」
『無理するなら、私がやる』
「いや…」
『五条にも頼まれてるんだ』
「…いや、本当に大丈夫。戦わないから」
千春がとやかく言う前に、私は走り出した。
『おい!こいつが後に誰かを傷つけるかもしれないんだぞ!?』
そうかもしれない。
『千夏!お前は術師だろ!』
その道を選んだのも私だ。
「でも、その前に私は人間なの」
トンネルの壁を上手く利用して、呪霊に絡まれることなく前進する。
次々とやってくる呪霊は皆、情けなく私の通過を目で追うだけ。
『それなら私がやる』
「それじゃあ意味がないでしょ!」
『こいつらを助けるには祓うしかないって言っただろ?』
「悠仁も傑も生き返った!まぁ…傑は違うけど」
『虎杖も違う。あいつは特別だった』
千春は私が呪霊の横を通り過ぎる度に、その首を切ってはそのまま次の首へ手をかけた。
「ねぇ!」
『また喧嘩するか?』
またこうやって煽ってくる。
私にとって、千春との仲違いや喧嘩はとても大きな出来事で、未だに許していない部分があるのに、千春はそのことを知らないのか、喧嘩を一時のじゃれあいとして捉えている。
『…どうした?』
「……千春、嫌い」
『どうして』
「その冗談、ちっとも面白くないから」
『そうか。もう言わない』
…なんか違う。
けれど、上手く言葉に出来なくて。
千春の行動に文句を言うのをやめ、早くトンネルを抜けることにした。