第60章 こてん
『千夏!』
起きろ。
『千夏!何してんだ、おい…!』
寝てる場合じゃない。
先程までこの状況に感謝していたのに、今では領域展開を行った五条悟を恨むまである。
それは全て、その男が囚われてしまったことに起因する。
ここからではその様子は詳しく見えない。
けれど、あれほどの大きな呪力の圧が消えたのだ。
それなりに反応はできる。
『千夏…!』
五条悟が封印されでもしたら、何人もの人が困り果てるのだろう。
数え切れない。
そして、千夏。
彼が封印されて困るのは、お前だろ?
なのに、どうして目を覚まさない。
力づくでも起きるべきだ…!
そこへ、カタン、カタン…と、足音が近づいてくる。
「千春。まだこの子は寝てるかい?」
『っ…千夏に触るなっ』
「私の親友に情けをかけてるんだ。彼女の顔くらい見せてやらないと」
何も出来ない自分がもどかしい。
けれど、何も自由にされる千夏ではない。
「…これは」
『天性の馬鹿だとしても、命くらい守れる』
私もこれには驚いたが、千夏は寝ている間に自分の周りに数cmの電荷の膜を張れるようになっていた。
オートなのか、自分でやったのかは分からないが、私がいない間にそれなりの工夫を施していたようだ。
”私頑張って勉強する!”
既に千夏は、私が術式について何も教えない故、自ら学びと実践を行い、多様なる応用を生み出している。
本来持ち合わせていた術式だから、相性もいいのだろう。
「何とも不思議な感覚だ」
千夏はこの男の手の間に数cmの隙間を空け、抱かれたまま移動させられる。
流石に攻撃などを受けることはないだろう。
明らかに今の千夏は無敵だ。
『一体今になって…何をするつもりだ』
「誤解するな。私はこの時を待っていたんだ」