第60章 こてん
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「えぇ……難しいなぁ」
先程から1人で頭を悩ませる八乙女千夏。
ここまでくだらない女だったとは、一周まわって笑いが零れる。
「そういう術式なのかな?いや、でも呪霊操術…えぇ?」
本当に馬鹿だ。
千春がいないと何も出来ない馬鹿な女。
と言っても、僅かにこの体は彼女に反応している。
先程、彼女を抱き寄せた時、この手が思うように動かなかった。
こんなことは滅多にないのに。
(このままではつまらんな…)
せっかく五条悟と離れてくれたのだから、一旦遊んでから殺そうと考えたけれど、正直簡単に殺せそうで退屈な未来が見える。
それならば────
「千夏が何を考えているか分からないが、とりあえず千春を解放しようか」
「…え!?!?まじ!?!?」
といっても、厄介なことになるのも避けたい。
「私の力ではお喋りできるようにするまでが精一杯だ」
「うん、それでもいい!」
…。
彼女は私が千春を封じたことを忘れているのか?
まぁいい。
とにかく、千春の力を少しだけ解放させようではないか。
「千春っ!」
『…うるさい』
「きゃ!千春ぅ〜…」
今なら殺れる。
それは間違いない。
けれど────
この威圧感はなんだ?
「私ねっ、ずっと」
『千夏』
「はいっ」
『周りを見ろ。そんな状況じゃないだろ。集中しろ』
…鳥肌が立っている。
『敵は誰』
「敵はいないよ?」
『…じゃあ、アイツはなんだ』
「傑?傑は傑じゃん」
『アイツは夏油じゃない』
「…そうなの?」
攻撃をしたところで、彼女には当たらないだろう。
目視は出来ないが、変な膜が彼女の周りにある。
なんなんだ、あの膜は…。
私が以前仕入れた情報が使い物にならない。
「あなたは傑じゃないの?」
「さぁ」
「…そういう所、似てるんだけどなぁ」
ここで我に返る。
(何を遊んでいる。早く殺した方がいいに決まっている)
しかし、殺そうとすればするほど体が動かない。
「…」
何故。
まさか、この体に意思が残っているとでも?
『どうだ。体は』
「なんか軽くなった」
『ごめんな。私にしか呪力は逃がせないのに…』
ふたりの会話はよく分からないが…。
(くだらない)
この女にどんな価値があるというのか。