第59章 綺麗事
*****
指定された時間より1時間も遅れてやってきた。
そもそも、外出が怖いというのに高専にやってきただけ偉いと思うし、この場所にはある程度のトラウマを抱えている。
そういうことだから、遅刻の件については許して頂きたい。
「遅れました、すみまー…」
だってこの場所は、私が学生の時に何度も呼び出され、怒られ、暴言に耐え……。
とにかく、心を壊されそうになる場所。
扉を開けるだけであの時と同じ威圧感を感じる。
この真ん中に経っていた過去があるわけだが、今この場において、その中心には別の人物がいた。
「な、何で…」
あれだけ距離を置いていたのに。
距離を取られていたのに。
どうしてこんな大それた場所に悟がいるんだ。
「遅い」
「あ、ごめ……んなさい」
「どれだけ待たせるんじゃ…全く」
悟は興味無さそうに私を見て、すんとおじいちゃん達の方を向いた。
「呼んだの、僕だけじゃなかったんですね」
悟も呼ばれたの?
そもそも、私はなんで呼ばれたの?
今は千春がいないから難しいことは分からないよ?
そんな疑問が回る中、オドオドした足で悟の一歩後ろに立った。
「八乙女千夏が遅刻してくれたおかげで、お前からは十分話は聞けた」
「同じことを千夏に聞くんですか?」
話の核心が見えない私は、周りにいるおじいちゃんの数を数えていた。
7人だった。
「その話はもういい。冒頭に言った通り、それとは別の話がメインだ」
おじいちゃんがそう言うと、悟は挑発的に笑って殺気を立てた。
「はっ……都合が良すぎませんか?」
悟は最強だから。
その殺気は人並み以上に感じる。
ここまでイライラしている悟は珍しかった。