第59章 綺麗事
「ゃ…」
「止めますか」
右手を下着のホックに、左手を私の頬に。
じっと交わった視線は、とても真っ直ぐ私の全てを捉えていた。
「…ゃ、めなぃ、で」
「…了解です」
これが最後のチャンスであることは分かっていた。
全ては私が弱いから、1人で生きられないから、いけないんだ。
パチッと、一瞬で胸元が軽くなる。
そこからの記憶ははっきりしない。
途中で携帯が暴れ始め、最終的に七海ちゃんが悟とお話して────
「起きましたか」
「……多分」
「コーヒー牛乳とその他諸々。好きそうなもの、買ってきました」
泣いたからなのか、瞼が異様に重い。
「……変なこと言ってなかった?」
「終始、五条さんのことを褒めてました」
ストローを差したコーヒー牛乳と、チーズハンバーガー。
「……ごめん、ありがとう」
「いえ」
情けなくて声が震える。
「……ほんと、ごめん」
諦めるとか、壁を作るとか。
自分のことは上手くコントロールできているつもりだった。
千春がいなくても、自分なりに現状を考察して、行動出来ていると思っていた。
「あと3時間ほどで五条さんが来ますけど」
「ああ…そんなこと言ってたね」
「どうしますか」
会うのをやめられるのか。
いや、そんなことはできないだろう。
「…七海ちゃん」
「はい」
「隣、いて?」
こんな最低な人間なのに、七海ちゃんは昔と変わらない態度でいてくれる。
「臨機応変に対応します」
「…ははっ!七海ちゃんらしい!」
それがとても心地良かったんだ。