第58章 特別編①
「なんか…癖で、足が追いつかなくなるとジャンプしちゃって…。『自ら選択肢を減らすなっ』とは言われてるんだけど、本当に焦ると癖が出るというか…」
「必ずしも足を浮かすことが悪いとは言えないけど…」
裸足の足をぺたぺたと畳につけたり離したり。
「……見た感じ、足の向きじゃない?」
「向きって…こう?」
「そう。千夏、全体的に身体が柔らかいから、蹴りあげた時の軸足が外に向きすぎてる気が」
普通だったら可動域の問題で足の向きが定まるけれど、千夏の場合は足首が外側に向いてしまって、体を戻す時に正面を向けない可能性がある。
「1回蹴ってみて」
左足、右足、左足、の順で空を蹴った。
それを真似して千夏も横で同様に蹴る。
「…違う」
「でしょ?」
同じ動きをしたけれど、僕と千夏の足、体の正面の向きが異なる。
「このズレを毎回無意識に直してるからロスができて焦るんじゃない?」
「……気づかなかった」
とはいっても、このズレを直す時間なんて僅かで、余程の接近戦でないと影響しないはず。
以前聞いたスパルタ練習は、この誤差が響くほどのものだったのか…。
そりゃあ、ここまで動けるようになるよ。
「でも、あんなにヘナチョコだったのに、ここまで出来るなんてすごいじゃん」
「ヘナチョコ言うな」
「事実じゃない?」
「あんたらが虐めてくるからやりたくなかったの!」
ギャーギャーと、過去の恨みを存分にぶつけてくる。
え、可愛い…♡
何この動物。
「あ〜も〜!なんて可愛い子なんですかぁ?」
「は?」
大きく抱きつこうとしたら、簡単に払われた。
「やめて」
「え?」
「…あー、なんか。昔のこと思い出したら余計に腹立ってきた、ウザ」
……もしかして僕らがからかった過去って、そんなに地雷だった?
そんなに怒るほど、なんかしたっけ!?
「ど、どこ行くの!」
「運動上。走ってくる」
「こんな暑い中走ったら倒れるよ!熱中症になるよ!」
「適度に走るから大丈夫」
こんな暑い中走りたくないし…。
ん〜…。
え〜…。
僕も行く?