第58章 特別編①
「ハッピーバレンタイン!!!!」
パーティーハットを被って、クラッカーを鳴らす。
授業中の教室に割り込んだ。
「可愛いウーマンが、チョコを持ってきましたぁ」
「…ち、なつ、さん…」
「うわぁ、今日も痛いなぁ…」
感想は無視。
私は優しい言葉だけで生きていく。
「僕の可愛い可愛い彼女さん。今、授業中だよー」
「うん。でも、今渡さないと時間が無くて」
「それなら仕方ないなぁ」
悟はニコニコしながら、私の肩を抱く。
今日は昨晩から行っていた任務から高専に直接来たし、なんなら最近は悟が忙しくて会えていなかったから、顔を見るのも久しぶり。
「はい、どーぞ」
パンダ、棘、憂太、真希。
「お菓子の詰め合わせだよ〜」
「あ、ありがとうございます」
「「「…」」」
お礼を言ってくれたのは、憂太だけ。
「…これって」
「私らが…」
「しゃけ…」
なんだ、なんだ。
「チッチッチ…私を甘く見るんじゃない」
今、みんなにあげたのは、この間買い物に行った時に買ったお菓子福袋の中身とほとんど同じだけれど、それだけではない。
「じゃーん!チョコケーキだよ〜!」
まぁるいホールケーキ。
疲れた体と頭には甘いものが必要なはず。
「これ、千夏さんが作ったんですか?」
「そう!」
「…へぇ」
真希がジト目で見るその奥には、にっこにこの悟。
「悟も食べて。はい、フォーク」
「えぇ〜?ありがとー」
こうして喜ぶ顔を見るのが、とっても幸せ。
何かが満たされるのを感じる。
「うまいうまい」
「しゃぁけぇ〜…」
最近はこの子達くらいの歳の人達が可愛くて仕方ない。
母親のような気分になってしまう。
中身がパンダではなく、もふもふした人形だったら、絶対に抱きついてたし、悟に気を遣わなければ棘にも抱きついていたはず。
「また歌姫と作ったの?」
「そんなとこ。美味しい?」
「美味しいに決まってるじゃ〜ん…む」
「キスはダメ」
本当はちょっと失敗したんだけど、気づかれてないから大丈夫。
2回目のバレンタインも成功かな?