第8章 夏の幻想
早く戻ろうと、二人の意見がまとまったところで、また新たな邪魔が入った。
「やっほー」
「おいしそうなの持ってるね」
私たちにもナンパ野郎が寄ってきた。
「そういうのいらないんで」
「そんなこと言わないでよー。寂しいじゃん」
ナンパ野郎たちは、吸い込まれるように硝子に寄って行く。
硝子の周りには二人の男。
私は一人、蚊帳の外。
「…」
「あっちにさ、場所とってあるんだけどさ」
「連れがいるんで」
「あ、この女の子?君も一緒に来てよ。楽しいよー」
”あ、この女の子?”
「ちょいちょい。私はついでか?」
オレンジの派手髪・色黒男の肩を掴んで、引っ張った。
「なんで私の方には来ないんだよ」
くすみピンクのきれいな髪の毛。
気が向いたときには、トリートメントにも気を使っている。
紺色で花柄の新調したワンピース型の水着。
トーンアップの日焼け止めを塗った上に、少しだけメイクをした。
いつもより少し可愛いはずなのに。
「いやいや、もちろん君も誘ってるよ」
「『あ、この女の子?』って取ってつけたように言ってたじゃねーかよ」
「いや、その…」
「そこらへん、どうなんだよ。私には魅力ないってか?」
私が詰め寄ると、もう一人の男が『行こうぜ』と言って、派手髪・色黒男とどっかに行ってしまった。
「あはは!千夏、欲求不満かぁ?」
「不満だよ。今日の私、意外とかわいいと思ってたんだけどな」
鏡の前でいろいろな角度から自分を観察したのに。
なんか残念。
そんな気持ちのまま、私達は五条達の元へ向かったのであった。