第8章 夏の幻想
「そろそろ何か食べる?」
「賛成ー!」
夏の海には多くの出店がある。
かき氷、フランクフルト、焼きそば、鮎の塩焼き……。
買出し班の私と傑は片っ端からお店を回った。
「それ、本当に全部食べれるのか?」
「もち!私の胃は無限だからな!」
五条の術式を真似しておどけてみせた。
「あっ、あれも食べたい!」
「まだ買う…」「傑は先戻ってていいから〜!」
傑に持っていた食べ物を押し付け、『お好み焼き』の看板を目指した。
「……わかったよ。それで最後にしろよー」
「了解---!」
みんなも食べるかもしれない。
そう思うと、財布も緩む。
明日からは少し節約生活を送ることになりそうだ。
陣取り班の五条と硝子と合流したであろう傑を探すこと、0.2秒。
いとも簡単に見つけることができた。
なぜなら、人だかりができていたから。
「新店舗開店かよ…」
ピンクやら白やらのビキニ女子がたかっていることは、少し離れたここから見ても分かる。
「めっちゃ買ったね」
「あ、硝子。逃げてきたの?」
「うん。危機察知能力だけは誰にも負けないからね」
これは冗談ではなく本当のこと。
硝子の危機察知能力はピカイチ。
今まで何度もその優れた勘を見てきた。
「戻る?」
「えー、もう二人だけで食べちゃおうよ」
「それはダメ。みんなで食べたい」
「はいはい。じゃあ早いとこ戻ろ」
私もあの場に行きたくない。
でも、あんな可愛いであろう女たちに、みんなと過ごす時間を邪魔されるのは避けたい。