第58章 特別編①
「…おめぇら」
「ひっどい声。水飲むか?」
「…さんきゅ」
傑がコップ一杯の水を渡す。
「授業、始まんぞ」
「…」
硝子が布団を捲っても特に反応無し。
余程体がだるいみたいだ。
「……昨日、どうなった?」
「ありゃ、記憶飛んでる?」
「…お前に勝ったとこまでは覚えてる」
「いや、私が勝ったんだし。あんたが勝ったのは千夏」
パッと目が合うが、直ぐにそらされる。
朝から傷ついてしまった。
「…ってことで、授業どーする?休む?」
「……いや、出るよ」
「っそ……くくっ」
「なんだよ」
「いや?さー戻ろー!」
硝子に背中を押されて部屋を出る。
そして、3人で顔を合わせて大爆笑。
「いやぁ、涙出るわ」
「バレない内に…」
「おい!!!!!!てめぇら!!!!!!」
朝から元気な叫び声。
私達は一目散に逃げて、教室を目指す。
五条はスウェットで学内を歩かないから、私たちの勝利は必然と言っても過言では無い。
「遅かったな。悟は?」
「後で来るってー」
「時間かかるだろーけど」
結構、悟が来たのはHRが終わったあと。
珍しくパーカーを着ていると思ったら、そのフードで顔を隠している。
「落ちなかったのか?」
「…」
「あれ!水性じゃなかったんだ。間違えちゃったぁ」
「…」
「いやぁ、ドンマイ、ドンマイ!」
各々、悟をバカにして、バカにした。
パーカーの紐を絞って、机につっ伏す彼の体温は、既に限界を迎えそうだった。
「お前ら、覚えとけよ」
私達は基本的に寝坊はしない。
それはこういう目に合うことが分かっているからだ。
「これは昨日の仕返しだよ」
「は?」
「だって、お前……昨日、千夏にあんなことやこんなことしてただろ?」
そんな傑の言葉に五条は顔を上げた。
そして、こちらを見る。
先程、少し傷ついた私の心は、髪の隙間から覗いている瞳に弱い。
また、昨日のことを思い出して、少しずつ顔が暑くなれば…。
「ちょ、トイレ!」
逃げる他ない。