第57章 特別講師
「だから、千春とお話できるように協力してくれない?」
「お姉様は今どこに?」
「ここにいるの。でも、厄介な制限がかかってるみたいで」
過去を思い返してみると、自分のメンタルがやられているときは、大体千春がいないときだ。
そう考えると、千春がいなければこの地獄のような毎日が死ぬまで続くということ。
それならば────
「僕達との未来は?」
ドア横のボール籠に腰掛けるスタイル抜群男。
「僕達と過ごしたいから、死なないんじゃなかったの?」
純新無垢な子供のように訊ねる悟と、首を傾げる私。
「何それ」
「…なんでもなぁい」
「……自殺はしないよ?」
「その選択肢は許さない」
「うん」
それでもやはり、少し不満そうな悟。
千春に嫉妬?
いやいや、今更そんなことはないだろう。
「ていうか、和田さんに謝った?」
「僕、襲われた側なんですが」
「和田さんが悟を?」
和田さんをちらりと見ると、テヘと綺麗さっぱりな表情で笑っていた。
「お姉様探し、手伝いますっ」
「和田さん?」
「え、なんですかぁ?」
「…和田さん?」
「今の五条先輩はフリーでしょ?元カノは黙っててください♡」
そう言って、和田さんは私の腕に絡みついてくる。
硬い腕と柔らかい胸の非対称性を感じながら、この気持ちをどこにぶつけるか悩んでいた。
「はぁ…」
「ため息なんて、そんな難しいことじゃないですよ。私達は一緒にお姉様を探す。そして、先輩が死んで、私は助かる。ほら簡単でしょう?」
和田さんが本当に分からなくなってきた。
何がしたいか、本当に…。
「そうだね、簡単だね」
「ふふ、じゃあ早速出かけますか?」
「うんと……一応、この後歌姫とご飯行くから」
「じゃあまた今度ですね。連絡ください♪」
「ありがと」
私が頭を撫でてあげると、「上着お借りします」とだけ言って和田さんは意気揚々に部屋を出ていった。
(本当に分からない…)