第57章 特別講師
無愛想で感情が死んでいる男の子。
それが理由で嫌がらせを受けて、けれどそれでも反応しなくて。
その子のお父さんは何度も病院に連れていこうとしたらしいけれど、お母さんが大丈夫だと言った。
そんな男の子は50メートル8秒の足で走ってってきたらしく、息を荒くして私のベットに近づいてきたみたい。
首が動かないから何も見えないけれど、髪の毛だけはうっすらと見えた。
「…ハナ」
「…※?」
そして、初めて顔が見えた時、その顔の珍しさに思わず口角があがる。
「※※だ…」
顔の皮がピリピリと引っ張られる。
「…何笑ってんだよ」
「※※」
「どれだけ心配したと…」
崩れるように姿を消した莉緒は、空っぽの袖の縁を握りしめた。
「※……※※」
初めて聞く声変わり後の莉緒の声に耳がくすぐったい。
「…!」
すると、何故か莉緒がナースコールを急いで押して。
すぐに看護師さんがやってきた。
「これ…」
「ああ…。涙腺がまだ完治してなくて、そのまま血が流れちゃうんです。和田さーん。1回、目薬差しますよー」
赤くなった視界が滲み、晴れやかになる前に……私は眠ってしまった。
後で聞くと、許された時間ギリギリまで、莉緒は私のそばにいてくれたという。
(…)
目が覚めて、次第と思考がしっかりしてきて。
なんで、と疑問に思う。
『ねぇねぇねぇねぇ』
『…』
『なんで無視するのぉぉぉ……いてっ、なんでデコピン…!』
莉緒を1人にしたくないから、という理由で依存していた。
1人になりたくないからだる絡みして、デコピンは痛かったけどその反応が嬉しいから何回でも絡んだ。
時には本当に怒らせちゃって、何回も謝り倒したこともある。
「も※…」
なんで来てくれたの?
いつも私の話無視するし、先に帰っちゃうし、勉強教えてくれないし…。
そんなに優しい人じゃなかったじゃん。
なんで私は素直になれないの?