第57章 特別講師
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「んじゃ、俺は八乙女さんのとこ行ってくるわー」
「俺ら、先帰ってんぞ」
「おー!」
何やら千夏に用がある虎杖君。
僕だって会いに行きたいのに。
「先生も東京戻ります?」
「いや、僕は呼ばれてるから、2人で先に帰りなー」
メカ丸がいなかった件について、1度歌姫と話し合わなければならない。
電話で話すのもいちいち厄介だから、短時間&簡潔に終わらせようか。
(2階の角部屋ってここ?)
こんな物置部屋みたいなところに呼び出すなんて、風情がない女。
ペットボトルの飲みかけとか置いてあるし…。
「せーんぱい♡」
「…おー。なんでいんの?」
振り向けば、そこには和田ちゃんが立っていた。
相変わらず、スーツ一択の真面目な格好だこと。
何か取りにきたのかな、とか思って道を開けるように端によったけれど、カチャリという鍵の音を聞いて、本能が怪しいと感じてしまった。
「今は京都なんだ」
「そーなんですよ。仕事があって…」
探しものがあるのか、フリをしているのかは分からないけれど、とりあえず出方を疑おう。
「仕事って?」
「ん〜…。五条先輩相手に心理戦なんて無駄なんで、正直に言うと」
和田さんは上着を投げ捨てて、ニカッと笑った。
「五条先輩を襲いに来ました」
おそい…?
襲い?
漢字変換が終わった頃には、既に和田さんはシャツのボタンを開けていた。
「僕を襲うって?」
「はい♪」
机と和田さんに挟まれた僕はそのまま腰を下ろした。
すると、更に追い詰めてくる和田さん。
「逃げないんですね」
「何が目的なの?」
僕の膝の上に乗った和田さんは首に手を回してきて、そのままの笑顔で見下ろしてきた。
「逃げないなら…進めちゃいますね」
そっと耳に髪をかけた和田さんは、そのまま顔を近づけてきた。
逃げるのは簡単だ。
それでも、逃げないのは────
「全部知ってるよ」