第8章 夏の幻想
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「「海ーーーー!」」
『Foo!』と外人さながらに叫びながら海に飛び込む。
冷たい水。
白い泡が視界を覆い、思わず目をつぶる。
「あんた達、はしゃぎすぎ」
「硝子ー!傑ー!荷物置いて早く来なよ〜〜!」
「あはは。もう何を言ってもダメだな」
海に来たのは何年ぶりだろうか。
こんなに気持ちよかっただろうか。
「いてて。貝踏んだ」
「硝子ーーー!」
「叫ぶな。恥ずい」
楽しい。
「すーぐー……」
「うるさい」
「モゴモゴ…(口塞ぐなぁ!)」
楽しすぎる。
「あれ、五条は?」
「千夏と一緒に飛び込んで……あれ、どこいった?」
3人で周りを見渡しても、どこにも白髪がいない。
前後左右に気を取られ、下から忍び寄る影に気づくものはいなかった。
「ばぁぁ!」
死んだ、と思った次の瞬間。
私たちの顔に水がかかった上に、少し勢いがあったので水が痛い。
「やぁ。皆、楽しんでる?」
「悟が来る前はね」
「何それ」
「あんたが邪魔ってこと」
1歩、後ろに下がった。
「どうした?」
「…すみません、写真撮ってもいいですか?」
「「「は?」」」
眩しい。
眩しすぎる。
水の滴るいい男といい女。
胸にかけていた防水の貴重品入れから携帯を取り出す。
パシャ、パシャパシャ…!
「ぐっ……。エロッ」
「おまわりさーん。ここに変態がいるんですけどー」
白い肌に泣きぼくろ。
それでいて、黒ビキニを着るなんて。
「うっ…眩しい!そこら辺歩いたら絶対に失神する女出てくるよ」
「褒めてるんだよな、それ」
程よく焼けている肌に、綺麗に割れている腹筋。
結わっている髪から滴る水を集めれば高値で売れそうだ。