第56章 チホちゃん
3コール待っただけで、すぐに繋がる電話。
「突然申し訳ありません」
『…あれ、千夏じゃない』
「あ、チホです」
『あー、なるほど?会えたんだ』
「千夏がそんな大層な言葉を使えるはずないと思ってたよー」なんて、少し失礼なことを言う悟さん。
『どうしたの?』
「じ、実は千夏さん…少しお熱があるみたいで。少し帰るのが遅くなります。17時までには戻りたいと思いますが…」
『え、待って。熱?』
「は、はい」
『大丈夫なの?』
多分、と言おうとした時、電話をひょいと取り上げられた。
「なーにコソコソ話してるの?」
マスクをつけた千夏さんが、しゃがみこんでニコッと笑った。
「……あー、大丈夫。少し疲れたみたい…はい?来ないでください…………そりゃ…会いたい、けど。うん…………意地張りました…ふふ、ごめんなさい」
悟さんは魔法使い。
さっきまで暗闇にいた千夏さんが、光を取り戻し始めた。
「悟、来るって」
「…良かったです」
勝手に中に入ってこれるのに、絶対にインターホン鳴らしてくるよ、って。
千夏さんは笑って言った。
その数分後、本当にインターホンが鳴って、機械に悟さんの顔が写った。
「ただいまー」
「お邪魔しますじゃないの?」
「ただいまー」
「……おかえり」
2人の邪魔にならないように、角から少しだけ顔を出して。
でも、すぐにバレちゃって悟さんが手を振ってきた。
「熱は?」
「大丈夫だって」
「ベットへGo」
悟さんの差し入れはとても豪華で、コンロの使い方も教えて貰ったからこれで料理を作れる。
「千夏さん、お粥です!」
「わぁ、美味しそ〜!何かいっぱい乗ってる」
「僕の分はある?」
「はい!今すぐ…」「ダメ。全部私が食べる」
少し残念そうな悟さん。
いっぱい作ったから、千夏さんでも全部は食べられないと思うけど…。