第56章 チホちゃん
「お熱、測りましたか?」
「うん。37度8分」
「ゆ、ゆっくりしてください…!」
微熱では済まされないぞ…!
「うん。チホちゃんがいるからすっごく楽だよ」
いくら小学生でも、千夏さんが邸宅に来る際に細心の配慮をして、家の人も千夏さんには特別な視線を向けていることは分かっている。
「そういえば、そのTシャツ着てくれてるんだ」
「は、はい!お気に入りなので、特別な時にしか着ないようにしてます」
「ふふ。嬉し」
千夏さんが特別なのは分かる。
その理由は知らないけども、千夏さんを特別視したい気持ちが私にもある。
だって、千夏さんはすっごく優しくて、悟さんの大切な人だから。
「千夏さんの部屋着もとても素敵です」
「これ?前に…悟が買ってくれたの」
「へぇ…」
最近は邸宅に遊びに来てくれないけど、きっと忙しいんだろうな。
悟さんともあまり会っていないようだし。
「今日は何でここまで来たの?」
「ハンカチを、返しに…」
「…悟に言われたんだ」
「なっ!」
なんで分かったの?
「チホちゃん、分かりやすい」
「…仲良しさんですね」
「うん、仲良しさんかも」
お付き合いをすれば、相手の考えることが分かるのだろうか。
そういうものなのか。
「何時までに帰ってきなさい、とかって言われた?」
「いえ…。ですが、仕事があるので17時頃には戻らないと…」
「まだまだ時間あるね。ちょっとお話しよ?」
「お辛くないですか?」
「大丈夫。ちゃんとマスクするからね…ちょっと待ってて…」
文脈が通っていないような気がするが、まぁ千夏さんらしい。
(はっ…!悟さんに連絡しないと!)
千夏さんが風邪を引いていることは、「何かあった」に入るだろう。
「千夏さん!電話をお借りしたいです」
「はーい」
千夏さんの携帯を借りて、貰ったメモを頼りに番号を押す。
電話マークを押すと、「五条悟」って文字が出てきて。
最新のハイテク機械なんだなって感動した。