第56章 チホちゃん
「あ、片付けてくれたの?」
「す、すみません、勝手に…」
「助かった。ありがとう」
ニコッと笑ったその顔は涙に濡れていて。
いや、ただの水滴かもしれない。
「何もなくてごめんね。アイス食べる?」
「いえ、お構いなく…!」
千夏さんはコーヒー牛乳を片手にとって、豪快に直接口をつけた。
「家、教えて貰ったの?」
「は、はい。その、これを返しに…」
カバンから出したのはあの時のハンカチ。
「わざわざありがとう」
手を伸ばした千夏さんは、ハンカチに触れる前に崩れ落ちた。
コーヒー牛乳が床に広がる。
「ごめん、ちょっと…やばいかも」
「千夏さん!」
震えてる…。
「チホちゃんは、私の…味方だよね?」
「勿論です…!」
味方、とはなんのことだろう。
でも、味方だと答えて欲しそうだったから、とりあえず答えてみたが、よくよく考えたらわたしは千夏さんの敵になり得ない。
「ベットに…」
「はは、大丈夫。自分で歩けるよ」
私の小さな体で千夏さんを運べるとは思えなかったけど、とりあえず試してみたが…やっぱり無理なものは無理。
千夏さんは自分の足でベットに向かい、そのままダイブした。
「何か食べたいものはありますか?買ってきます!」
「んー…大丈夫。お腹はいっぱいなんだ」
悟さんも千夏さんへの買い物だったら許してくれると思う。
実際、家には何も無かったから、千夏さんの「大丈夫」を信用せず、近くの薬局に向かって飲み物や軽食を買えるだけ買った。
「ただいま戻りました〜…」
寝てるかな、と思って静かに入ってみたけど、千夏さんはベットに座って携帯を弄っていた。
「おかえり。ごめんね、ありがとう」
買ってきた飲み物を千夏さんに渡し、軽食は何時でも食べられるように小さなテーブルをベット脇に設置し、その上に置いた。