第56章 チホちゃん
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(ここだよね…)
以前都心に行った時に見たビルよりは小さいけど、十分大きくて真っ黒な建物。
外観はとてもシンプルで、大きな箱のよう。
『この鍵を指して、0815ってボタンを押す』
(0...8...1...5!)
5を押した途端、ウィーンと静かに開く扉。
温かい光に照らされるカウンター(?)にいる人に微笑まれて、思わず固まってしまう。
慌てて頭を下げて、言われた通り右に曲がる。
その後左に曲がって…エレベータに乗って2階を押す。
出たら左に曲がって209号室を探す。
(千夏さん。こんなところに住んでるんだ…)
邸宅とは違う造りに驚いてしまうけど、凄く……なんて言うか……良い!
『インターホンを押せば出てきてくれると思うから。なんも難しいことは無いよ』
何も知らない赤子に語りかけるように、悟さんは話してくれたけど、私でもそれくらいは分かる。
でも、悟さんの子供扱いは好きだった。
ピーンポーン
(?)
ピーンポーン
(……出てきてくれない!)
ど、どうしよう。
不在?
無視された?
ど、どうしよう…!
何かあったら連絡して…って言われたし…!
慌てて建物を出て公衆電話を探した。
公衆電話の数も少なくなっているし、探すのに苦労したけれど、何とか見つけて…。
(はっ…!お札が使えない!)
悟さんから貰ったのは1000円札数枚。
何かを買えば小銭が貰えるけど、悟さんのお金で無駄なものを買うなんて出来ない…。
(むむむ…)
1000円札を睨みながら、マンションの中に戻る。