第55章 こうするしかなかった
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「悟のことは…後でちゃんと話すね」
先輩の人生史は大体把握している。
ご両親の様子を見る限り、2人は五条先輩のことは詳しく知らないようだ。
(除籍の話…理解したということで。まぁ、いいか)
夜蛾学長や五条先輩が1度は話してると思うけど、先輩のアホ具合と理解する力が皆無であるこもは知っている。
”私の場合、何回も転籍してるらしいから…死んだ時に手続きが面倒にならないようにって、悟言ってた!”
先輩の発言も間違いではないが、本質をついていない。
先輩の出生届が出されてから、今まで転籍を5回もしている。
そのうち1回は、先輩がこの世界にやってきた時に行われたものだ。
除籍をしてから新たな籍をつくり、転籍した…。
正直意味が分からないけど、記録上そうなっている。
つまり、だ。
先輩は呪術師になったその時から、表向きに死んでいることになっている。
何故か。
上は先輩をすぐ殺すつもりだったから。
つまり、除籍によって先輩を表向きに殺し、移籍によって先輩の死亡による手続きを意のままにできるようにした。
すべては、先輩を殺したい願望の表れ。
五条先輩は上手くごましてたみたいだから、私も本当のことは言わない。
そうしないと、五条先輩の努力が無駄になる。
「お2人の当時の心情はお察しします」
行ってきます、といつも通り登校し、帰ってこなくなった。
しかも、戸籍を勝手に編集され、先輩との連絡も遮断され…。
挙句の果てに、死んだと報告が来る。
我らが上司も中々酷いことをする。
「…それで、更新についてですが。自治体…役所側も黙ってられないわけですよ。上からの圧力で動いたとしても、このように戸籍を簡単に変えて何かあったら、責任はあっち持ちですから」
「だから、更新を?」
「そうです。『私は生きてます。ここに住んでます』という情報を渡して、安心させるんです。ほんと、形だけです。特に意味はありません」
そのおかげで先輩は問題なく暮らせてる。
でも、期限が切れてるから役所の人には大迷惑。
「その更新には、本人の現情報。それと、除籍・移籍前の戸籍…つまり、ご両親の戸籍や他の書類がいくつか必要です。形だけなのに、意外と大変です」
まぁ、これは親との連絡を取らなかった先輩に対する嫌がらせだ。
先輩は気づいてないようだけど。
