第55章 こうするしかなかった
「というわけで、先輩?」
その声にハッとして前を見ると、2人はぽかんとした表情で和田さんを見上げていた。
「な、何」
「ついでなので、住民票の更新。やっちゃいましょ」
住民票の…更新。
「住民票って役所で貰う…」
「それです。ここに来る時、データ参照しましたけど…先輩の住民票、随分昔に期限切れてます」
いくら私でも住民票くらい知っている。
けれど…
「期限って何?」
「ですよね。知らないと思ってました」
だって、期限が約7年前で切れてるもん。
と、和田さんは疲れた様子で呆れた。
「一応、ご両親にも関わることなので、是非耳を傾けてもらって。きっと、現学長…夜蛾正道さんも御二方に説明してないでしょうから」
和田さんは自身のデイバックからタブレット端末を取り出して、少し操作した後に画面をテーブルに置いた。
「まず、私達が働いている場所はお2人の暮らすこの社会とは、かなり違っていることをご理解頂きたいです」
「…ええ。それは夜蛾先生からも聞きました」
「…私達も、実感しています」
「それは良かったです」
和田さんはタッチパネルを使用するために手袋を外したが、その義手に2人は特に反応しなかった。
「きっと皆さん、先輩の戸籍が移動されていることはご存知だと思います」
画面に表示されるは表計算のページ。
スクロールすると、そこには私の名前があって、その横に13年前の日付が。
「…戸籍が移動するなんて、当時は驚いて…。何度も問い合わせましたよ」
「対応が遅れたようで、その節は大変申し訳ありませんでした」
お父さんは和田さんを睨み、その拳を強く握っていた。
どれも私の知らない話だけれど、呪術界の力があれば戸籍くらい簡単に動かせるのだろうと理解した。