第55章 こうするしかなかった
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「え…今なんて?」
「縁を、切らせてください。手紙もいらないし、私の知らないところで、どうか幸せになってください」
お父さんもお母さんも大好きだった。
優しいし、干渉してこないし、好きなことをさせてくれたし。
好きなところはキリがないくらいある。
「ど、どうして?」
でも、私には合わなかったんだ。
無性に与えてくれる愛が苦しかった。
「ねぇ…」
”次、その面見せたら…殺すからなっ…!”
「志保。少し落ち着きなさい」
「でも!」
「…千夏の話を聞こうじゃないか」
そして何より。
お父さん達が嫌われることが、苦しかった。
「…隣の家。おじさんの家でしょ?」
「そ、そう!お、お父さんの仕事で3ヶ月だけこっちにいないといけなくて…。家を貸してもらってるの」
お母さんのお兄さんが暮らしてる。
お母さんとおじさんは縁を切っていない。
「それが…どうしたの?」
「私はおじさんが嫌い。だから、お母さん達と縁を切る」
「なっ……兄さんが嫌いなの?それだけ?」
「そう」
勝手なのはわかってる。
でも受け入れて欲しい。
「なんで?兄さんが何かした?」
「…別に」
席を立つと、意外にもお父さんが私の腕を掴んだ。
「離して」
「本当のことを話してくれ」
「だからっ」
「もう後悔したくないんだ」
”もうやだっ…なんで私ばかり嫌われるの…!!!”
「私だって…もう嫌われたくないのっ」
あの時の私は心が幼かった。
だから、おじさんの言葉を受け流せず、涙を流した。
「俺らが千夏を嫌いになるわけないだろ」
「でも、面倒だと思ってた!」
「思ってない!」
なんで…。
「思うわけ、ないだろ…?」
なんで…。
お父さんが泣くの?