第55章 こうするしかなかった
「お母さんも一緒に食べよう?」
「そうね。私にも千夏と同じの頂戴」
「和田さんは?」
「私、この刺身食べたいです!」
丁度夕飯時だったこともあり、和田さんにはレンチンのご飯が提供された。
もちろん、味噌汁付き。
じゃがいもと玉ねぎ、それと油揚げの入った、お母さんの懐かしい味噌汁。
ここに来るまで、お母さんとの会話がどういう方向へ走り、どのように盛り上がるかとても心配だったけれど、そんな心配も杞憂で会話は弾みまくり。
和田さんがいることも幸いだったけれど、なによりお母さんが話題をいくつも提供してくれた。
「ああ、おかしい…。こんなに笑ったの久しぶり!」
「お父さんは?」
「もう少しで帰ってくるはず。どんな反応するかしら。楽しみね」
和田さんは適度に会話に参加して、適度にそっぽを向いてくれる。
「和田さんは千夏の後輩…って言ってたわよね?」
「はい!」
「この子、どんな先輩なの?」
「ちょっと…」「えっと」
私の抑制を無視して、和田さんは能天気に続ける。
「一言で言うなら、自由奔放?」
「あはっ、やっぱりそうなのね」
「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。楽しいことだけやりたい!っていうイメージでした」
「うんうん。昔っからそうだったの」
自分の話を他人がする現場を目の前で見るのは、なんともむず痒い。
「まぁ、私は先輩とあんまり関わってこなかった人なんですけど。先輩と仲良かった人曰く、『八乙女さんは悪魔です!』って」
「まぁ!」
私のことを悪魔だなんて言う人は伊地知くらいしかいない。
……帰ったらしばこう。
「でも、遠くから見てても愉快な人でしたよ。怒られるの分かってるのに、先生にちょっかい出したり…」
「先生って夜蛾先生?」
「そうです!体育倉庫の石灰上から落として真っ白にしたり、背中に乗っかって離れなかったり」
「もー、千夏ったら…」
違う。
石灰は”落とした”のではなく”落ちてしまった”のであって、なんなら先生を真っ白にした張本人は傑だし。
背中に乗っかったのは愛情表現だ。