第55章 こうするしかなかった
「綺麗な家ですねぇ」
「そうだね」
和田さんは私の後ろをついて遠慮気味に、けれど興味津々な様子で家の中に入ってきた。
「あ、これ。先輩じゃないですか?」
「…懐かし」
玄関早々で私の写真が何枚も飾られている。
「先輩、愛されてますね〜」
「うん」
「…開き直った?」
「愛されてるのは理解してる。昔からね」
でも、それが私に合わなかっただけ。
「ん〜、何して待ちます?」
「テレビ見よう」
「…やっぱりブレないですね」
「何が?」
「いーえ、なんでも」
この時間だとサザエさんがやってるはず。
…ほら、ビンゴ。
「えー!ニュース見ましょーよ」
「ダメ」
それから30分ほどして、お母さんは大きな袋を3つも持って帰ってきた。
ちょうどサザエさんとのジャンケンに負けた時だった。
「おかえり」
「ただいま……やっぱりサザエさん観てたのね」
「うん」
「ふふ。変わってない」
そんなに大きな袋が3つも…。
何が入ってるのだろうか。
「手伝いますよ〜」
「いいのよ、お客様なんだから」
「遠慮せずに♪」
和田さんとお母さんが購入品を選別している間、私は洗面所を借りた。
顔をマッサージして、様々な表情を練習しておく。
「千夏ー」
呼ばれて戻ると、テーブルの上にはホッホプレートが用意されていて
「肉、野菜、魚…ホットケーキもあるよ。何が食べたい?」
まさに、パーティ状態だった。
「そんなに食べられないよ」
「食べない分は明日に回すから。ホットケーキのトッピング用にフルーツも買ってみた。ほら」
「…じゃあ、イチゴ。ホットケーキは自分で焼く」
なんて盛り上がり方だ。
これでも庶民的生活を送っていたから、これらの合計金額がざっと頭に浮かぶ。
一般家庭には散々なダメージだろう。