第55章 こうするしかなかった
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「ちょっと!いい加減教えてくださいよ!」
「あとちょっとだから」
手紙に住所が書いてあって助かった。
私に地図を読むなんて高等な技術はないため、アプリに入力すれば直ぐに教えてくれる。
「んなんだから、ウルハっちに呆れられるんですよ!」
「…私って呆れられてるの?」
「無自覚!?」
「…ふっ。嘘嘘。それくらい知ってる」
「もぉ!」
昔に和田さんと仲良くお喋りした記憶はないけど、仮に話していたら物凄く仲良くなれたかも知れない。
「一体全体、どこに行くんですか〜!」
「私のお家」
「新幹線に乗って?」
「そう」
「着いてきて」なんて言ってないし、勝手に帰ってくれて構わないのだけれど、どうやら私に用があるらしい。
先程から大したことではないと明言を避けられているため、私も避けているだけ。
「…でも、八乙女先輩とお出かけなんて。自慢しちゃお〜」
「誰に?」
「ウルハっちと伊地知。それとぉ、五条先輩と家入先輩、七海さん!」
私の交友関係のほとんど全てではないか。
やめてほしい、と言えば和田さんは仕方なさそうに携帯を置いてくれた。
硝子達にバレたら、すごく心配をかけてしまいそうだ。
『次顔を見せたら殺すからな』
……やば、鳥肌立ってきた。
「駅弁食べます?」
「いらなーい。食べたいならどうぞ。奢るよ」
「いや、大丈夫です。人前でマスクとると……ね?」
私は和田さんがこうなってしまった経緯を知らない。
少し気になるけど、そんな簡単に聞いてはいけないだろう。
七海ちゃんや伊地知は知ってそうだけど…。
となると、悟も知ってるか。
「でもビックリです。あの八乙女先輩がこんな風になるなんて」
「こんな風とは」
「トゲがなくなった感じ」
「…それ皆に言われる」
「そりゃそーですよ」
昔と今の自分がかなり異なることは、私でも分かってる。
だからこそ、昔の私を知っている人がいないと、あの人達に会うことができない。
私は一体、どんな感じだったのか。