第54章 曇
「っ…!おい…!」
釘崎がドアを引きちぎろうとするけれど、そんなことは当然不可能で。
「八乙女さん!大丈夫!?」
俺達3人に限らず、八乙女さんが忌み嫌われ、その命が狙われていることを知っている。
だから、生死が分からないこの状況に慌てていた。
「ふんっ…!」
「せーので行くぞ」
息を合わせてもドアはビクともしない。
「…五条先生が用意した部屋だもんな」
まぁ、確かに。
あの人がこんなもんでセキュリティが突破されるような部屋を用意するはずがない。
「なんかあれかな。専用の切るやつないと…」
「どけ」
でも、所詮人工物だ。
「玉犬 黒………壊せ」
玉犬が数回扉を壊そうとすれば、ドアはあっという間に粉々に。
「八乙女さん!」
真っ先に2人が駆け寄り、脈を確認。
「大丈夫…生きてるけど…熱すぎる」
「とりあえず中に運ぼ」
「そだな」
何だこの部屋。
八乙女さんらしくない。
散らかってるし、部屋のカーテンは全て閉め切っていてジメッとしている。
2人はドアが壊れていることなど知らないように、せっせと八乙女さんを運んでいた。
…ドア、どうするか。
とりあえず、開けておこう。
「冷蔵庫の中、コーヒー牛乳しかないんだけど!どゆこと!?」
「保冷剤系あった?」
「あるよ。持ってく」
いや、やっぱり無理やりにでも閉めるか…。
「ちょ、伏黒。冷凍庫閉めといて」
そんなに要らないだろ、とツッコミたくなるほどの保冷剤を持っていく虎杖とすれ違い、俺は言われた通り静かに戸を閉めた。
「んな沢山いらねーよ」
「そうか?」
そんな二人の会話を聞きながら、久しぶりに訪れた部屋を控えめに見渡した。
(…ゴミがない)
部屋は散らかっているけれど、ゴミは全く見当たらない。
生活していれば、プラスチックの一つや二つあってもいいのに。