第7章 運命
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「八乙女千夏。何故呼び出されたか、分かっておるな」
「はい」
以前音楽サイトで見つけたゲームミュージックを思い出した。
今、その音楽がとても似合うような緊迫した場にいる。
確かあの音楽を七海ちゃんと灰原にしつこく聞かせたんだっけ。
「話に入る前に…。書類は提出したか?」
「してないです」
「「「!!」」」
「あれだけは書けないです」
以前みんなでマリオカートをやった時のことを思い出した。
『アイテム無しって言ったのに、使ったでしょ』
『使ってないです』
『ハンデのクソもない!最低!』
『使ってないです』
あの後、普段からの不満が爆発して、殴り合いになったんだっけ。
「いいんだな。我々の仮説を認めることになるぞ」
「…はい。お好きにどうぞ」
分かってた。
私はこうなる運命だったって。
愛を大事にすれば、それなりの犠牲を払わなくてはいけないことを。
「…本当はここで死罪と言い切りたいのだが、4年前の惨劇を繰り返そうとは思わん」
4年前の惨劇。
あの時のいざこざを上層部ではそう呼んでいるのか。
惨劇と言いたくなる気持ちも分かる。
しかし正直なところ、『五条の癇癪』とか『八乙女と五条の駄々こね』とか、可愛い名前が良かった。
「八乙女千夏。お前は切り札になる可能性をもっている」
切り札。
言い換えれば、『五条を動かせる』ということだろう?
反吐がでる。
「徹底管理の元、呪術界の存続のために生きることを約束し、特級過呪怨霊『八乙女千春』を……」
「長い。もう分かりましたから。そのシワシワ声、耳障りなんですよ」
「なっ…!」
生憎、無条件に年上を敬うとか、目上の人に謙るとか、そういうのが大嫌い。
一方的に話を切り上げ、おじいちゃん達に背を向けた。