第54章 曇
「さて!ここからは同級生の交流ってことで、邪魔者は消えましょ!」
悟の大きな手鳴らしに、その邪魔者は同時にそこを離れる準備を始めた。
「八乙女先輩!」
「ん?」
感情が入り交じり混乱している様子がヒシヒシと伝わってきた。
「後で、また…」
「うん。まだ帰らないよ」
私もウルハに聞きたいことが残っている。
まだ東京に帰るわけにはいかない。
「千夏さん」
「何?」
「昨日の件についてお話が」
「…分かった」
私と悟が帰った後、あの中で統率を取れたのは七海ちゃんしかいない。
…あの人を”対処”したのも、七海ちゃんだろう。
「皆ー、僕達そこら辺散歩してくるからここ居てねー!」
「りょーかい!」
この年頃の生徒達に「季節外れの海で遊んで!」と言うのは申し訳ないと思っていたけれど、どうにか楽しんでくれているようで良かった。
「…あの人は沖縄県警に引渡しました。今朝連絡が来て、取り調べを始めたとのことです」
そうか。
当たり前に警察に連れていかれたんだ。
へぇ。
「ですが、あの男を逮捕することは不可能です」
「…は?」
逮捕が不可能?
罪を認めてたのに?
「…時効か」
悟の口から出た言葉は知っている。
でも、あの人は千春達を…!
”人間にまかせたら、千夏ちゃんが我慢することになる。だから、私に任せて♡”
もしかして、──ちゃんはこうなると分かっていた?
だから、──ちゃんは自分で手を下そうとしたのか?
「でも、社会的には死ぬだろ。こんな大きな件がマスコミに取り上げられないわけが無い」
「…それが。警察曰く、そんな事件は無かった、と」
「ん?」
「事件に関することは何も残ってないと、言われました」
「いやいや。あるって。僕が調べ」
「もういい。この話止めよ?」
いい、いい。
どうでもいい。
「あの人は罰せられないし、捕まらない。ネットに晒されて苦しむかもしれないけど、死なないんでしょ?」
「「…」」
「なら、もういい」
本当に不公平。
大嫌い。
「…皆死んだのに。ムカつく」
そんな一言が零れてしまったから。
ハッとなって2人を見た時には既に悲しい顔をさせてしまっていた。
「ごめん、今のは嘘」
取り繕う事すら難しくなってきた変化。
私は────昔に戻りたかった。