第54章 曇
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私は今まで何度自分の存在に疑問を持ったか分からない。
そう考える度闇の中に落ちそうになるけど、私のことを認めてくれる人の言葉が支えてくれる
だから、私は今ここにいる。
「…ウルハは昔に戻りたい?」
「私ですか?」
ウルハは私を見て、その次に子供たちの方を見た。
その顔はまさに母親そのもので、また昔のことを考えてしまう。
「戻りたくないですね」
「あ、そうなんだ」
「戻りたいと思う気持ちもあるんですけど、そうじゃなくて…今の自分が大切にできるものを大切にしようって思います」
今の自分が大切にできるもの…。
私には────
「ご、五条さん…!?」
とその時
ヒィヒィと言いながら、浜辺横の階段を駆け下りてくるスーツを着た男。
「なんでいるんですか…!?」
「内緒ね。僕、15時に日本に着く予定だから」
え、なんでこいつが?
そんな顔をしているのは、私とウルハだけ。
「お久しぶりです、鈴木さん」
「…伊地知?」
そう、伊地知。
「七海ちゃん、呼んだの?」
七海ちゃんは肯定も否定もせず、時計をちらりと見た。
「卒業以来、ですかね」
「そう、だけど、何でここにいんの!?」
「えっと…まぁ」
悟がここにいるとバレて平気なのか?
伊地知を信用していない訳では無いけれど…やっぱり心配。
「お変わりないようで…」
「…アンタも頭がお堅いままみたいで」
「あ、相変わらずの口…」
…。
「…和田さんも来れたら良かったんですけどね」
「…。あの人、今何してるの?」
「…」
「…そう」
和田さん、伊地知、ウルハ。
この3人は稀に見る優等生だったと、いつしか聞いた記憶がある。
伊地知は補助監督として働き、ウルハは術師をやめて沖縄に移住。
じゃあ、和田さんは?
え、嘘。
みんな知ってる感じ?
伊地知の顔をグッと睨み、説明を求めた。
「まぁた虐められたいの?」
「そ、そんな…!」
伊地知のネクタイを引っ張って、睨みを強くする。
「僕、いじめられたぁい」
「悟は黙ってなさい」
何さ。
私だけ知らないなんてアンフェア。
「そんな簡単に出来る話じゃ…」
「…っそ」
術師をやっていれば、”そういう結果”も普通に起こる。
そんな感じで受け入れようとしていたら────