第53章 本気で想う大切な人
「……と、まぁ。今はこんな状態です」
「…ほんと、色々あったんですね」
鈴木さんがいなくなってから、かなりの人が入れ替わり、入れ替わり…。
呪術界の平穏は保たれつつも、大事件がそれなりにあった。
「八乙女先輩…。なんでそんなに恨まれてるんですか?」
「さぁ」
「…不憫」
「ええ」
1年ほど前、千夏さんは再び呪術界に戻ってきた。
それと同時に五条さんは不安定になった。
喜び跳ね回るかと思ったのに、五条さんはゲリラ豪雨の中私の元を訪ねて面白みに欠けた冗談を吐いた。
『もし千夏が死んだら俺のせいだ…。俺が、殺さないと…俺は……』
冗談であって欲しかった。
「七海先輩には申し訳ないけど…、私はあのふたりに死ぬまで一緒にいて欲しい。恋人としてじゃなくても」
「私もそう思ってます」
「え?いいんですか?」
「はい」
私は千夏さんに何も望んではいない。
「……辛くないんですか?」
「全く」
こうして話していると、自分は何を話しているんだろうと、自分を心配してしまう。
「八乙女先輩のどこが好きですか?」
「さあ」
「あ、そういうのずるいです」
鈴木さんがお酒に強いかどうかは知らないけれど、少しペースを落としてもらいたくて、気持ち未開封のお酒を自分側に寄せた。
「顔?あの人、可愛げのある顔ですよね。先輩は綺麗系好きかと思ってました」
「勝手に話を進めないで下さい」
「だって先輩が何も言ってくれないんですもん」
あの人より可愛い人、美人な人など沢山いる。
顔が好き、とか、性格が好き、とか。
人を好きになるというのは、そういうことでは無い。
「…あの人は息をしているだけで魅力的なんです」
「…うっわ。究極の惚気じゃないですかっ!」
心の中で言ったつもりの言葉が何故か外に出て。
私はしばらくあらゆる方向からからかわれ続けた。