第53章 本気で想う大切な人
「ほれほれ、ご飯できっぞー。そろそろおもちゃしまえー」
「だって、ななみせんぱい」
「こら!自分でやりなさーい」
七海さんはこっち、とダイニングテーブルに導かれ、ホットのお茶を前に出された。
「遊んでもらっちゃってすみません」
「いえ。慣れてます…から」
「あ、お子さんいらっしゃるんですか?」
「…いえ、そういう訳では無いですが」
思い浮かべるいくつかの顔。
「子供らしく振る舞う人が何人かいまして」
「子供、らしく…」
例えば、あの人とか、あの人とか…。
ぱっと思いつくだけでこんなにも。
「…あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
返事として彼の目を真っ直ぐと見る。
「ウルちゃんの…というか、貴方方の仕事は怪我をするほど危険なんですか?」
呪術師はそもそも家庭を築くケースが少ないが、大抵は同職の方と婚姻する。
それはお互いの仕事に理解があり、隠す必要が無いからだ。
「どこまで聞いてますか?」
「…それが何も知らなくて。ウルちゃん…って、すみません。嫁の…」
「今更大丈夫ですよ」
「はは…すみません」
まぁ、そうだろう。
そういう規定だから仕方ない。
「…昔の話をすると辛そうな顔をするから、何も聞けなくて。俺と会う前のことはほとんど知りません。だから、そんなに辛い仕事だったのかなって」
鈴木さんのことだ。
黙秘するとなったら、とことん黙秘し続けるだろう。
「2日前だって、突然ジャージに着替えて『しばらく帰らないかもしれない。心配しないで』って出てくんですよ?前の仕事の緊急招集って言ってたけど、あんなにボロボロに…」
お茶を飲む。
こうして見ていると、本当に鈴木さんを愛しているのだと伝わってくる。
「もし、このまま…」
「それはないですね」
鈴木さんのことは何も知らないけれど、これだけは譲らない。
「彼女には二度と、こちらの世界には関わらせませんから」
少し口調が強かっただろうか。
「…彼女が戻りたがっても、私は止めます」
「…はは。ウルちゃんには申し訳ないけど、そう言ってくれると助かります」